Al Gore鵜呑みにせず自分なりの理解と心がけの一助に

今月発表された2007年のノーベル平和賞には気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とアメリカ合衆国45代副大統領Al Gore選出され、これは地球温暖化に対する世界的な関心の高さ・危機感の表れであると同時に、さらに関心を高める一つのきっかけともなりました。「平和賞」の趣旨としてどうなのかという若干の疑問を感じないでもありませんが、地球環境のために世界各国が協力し合うというのも一つの平和の形であるのは間違いありません。

Al Goreは長年環境問題を軸に政治活動を続けてきており、ことに温暖化問題は熱心に研究を重ね、その内容を元に全米を中心に世界各地でスライド講演を重ねて地球温暖化の問題を訴え続けるなど、そうした地道な活動がノーベル賞に繋がったのでしょう。日本でも以前テレビ番組「世界一受けたい授業」に出演して短時間の講演が行われたのを私も観ました。このスライド講演の内容を中心に映画にまとめたものが今年初めに公開された映画「不都合な真実」ですが、来日の際にテレビ出演が実現したのもこの映画のプロモーションの時だったのではないでしょうか。

不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディション
監督:デイビス・グッゲンハイム
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2007/07/06)
ISBN/ASIN:B000MQCT24

映画の内容はその当時最新のスライド講演の内容と、Goreの生い立ちにまつわるエピソードその他の独白が数分おきに交互に入るといった構成になっていて、延々と講義を聴かされるような退屈なものではありません。またさすがに全米屈指の政治家ですから話術も巧みで、講演自体も全く飽きることはないでしょう。環境問題について全く予備知識のない状態でこの映画を観た人も、終わる頃には地球温暖化に対して危機感を感じるようになっていることは間違いありません。

ただ、この映画については紹介されているデータの客観性と、その数値の正確さなどについての疑問の声が科学界からも上がっているということは事実です。これはあくまで環境問題に取り組む政治家Al Goreによる政治的プロパガンダであり、Goreも嘘にならない範囲で恣意的にデータを紹介しているというところはあるでしょう。私もグラフの縦軸に数値が入っていないところなどにはちょっと疑念を持ちました。とはいえ、映像として紹介されている世界各地の氷河や極地の棚氷の惨状などは客観的に受け入れざるを得ない大きなインパクトのあるものです。

まあ、毎年毎年「今年は異常気象だ」と言われ続け、猛暑の夏と暖冬だと思ったらドカ雪に見舞われたりと、日本人なら誰でもここ数年の天候のおかしさは実感していることでしょうから、日本人にとっては「地球温暖化」というキーワードはかなり市民権を得たものとなっているのだと思います。しかし、日本ほどには四季の変化の豊かでない国々では実感しにくいところもあるのか、あるいは石油利権を握る人々の政治的な圧力が強力なのか、世界の30%の二酸化炭素を排出しているというアメリカが京都議定書も批准せずにいるというのは理解に苦しむところです。

とはいえ私自身もあまり環境に優しい生活をしているとは言い切れず、これまでは二酸化炭素の排出というのはあまり意識してこなかったところなのですが、この映画を観たからにはどうしても意識せずにはいられなくなりました。まあもともと根がケチなので、エネルギーを無駄にするということにも我慢ができないわけで、そんなひどいことはしてきていないはずなのですが…

それにしても、もしもこの人があの選挙で勝っていたとしたら、世界は相当違っていたことでしょうね…良いも悪いも…