Nine Inch Nailsこの差は一体…

昨年、イギリスのロックバンドRadioheadがアルバムIn Rainbowsをウェブサイトで先行公開し、期間限定でダウンロード販売したのですが、この時はダウンロードする人が好きな値段を付けて支払うことができる、という言い値での販売であるということが新しく、話題を呼びました。実はこの時値段を0とすることもでき、半数強の人は無料で入手していたということのなのですが、実際にはBitTorrentなどのP2Pでダウンロードした人も少なくないようです。しかしながらCDの店頭販売が始まった直後、タワーレコードの販売ランキングでIn Rainbowsが1位になっていたのを見たときには、まだまだインターネットも普及の余地があるのだと思ったものです。

それはさておき、今度はアメリカのインダストリアルというジャンルのバンドNine Inch Nailsが、新作アルバムThe Slipの無料ダウンロード公開という動きに出て話題を呼んでいます。こちらは有効なメールアドレスを入力するだけで完全に無料でダウンロードが可能で、しかもクリエイティブ・コモンズの「表示-非営利-継承」というライセンスになっていて、非営利である限り楽曲を自由に加工し、公開することができるという非常に緩い制限のものになっています。さらに、公開されているフォーマットがVBR(可変ビットレート)のMP3の他に、FLACApple LosslessというCDレベルの2つの可逆圧縮形式と、さらにCDを超える高音質形式となる24bit 95kHzのWAVEという幅広いものとなっており、かなりのこだわりが見られます。なお、MP3以外の3つの形式のファイルはサイズが大きいのでサーバの帯域が苦しくなるためか、BitTorrentの.torrentファイルのみのダウンロードとなっています。

私もとりあえずMP3でダウンロードしてみましたが、白状すればインダストリアルというジャンルは私の趣味に合いません。しかし、こういうメジャーなアーティストがこういった取り組みを見せるというのは色々な意義があると思います。まあ、

as a thank you to our fans for your continued support

と言っていますので、あまり政治的な意味はなく、その言葉通り日頃の感謝を込めてということなのかもしれません。

しかし、経済的に余裕のできたアーティストによる囲い込みだという見方もあるようで、手放しで褒めるべきことなのかどうかは微妙なところもあるようです。確かに生活のかかっている新進のアーティストなどにとってはCDの売り上げというのは必要なものでしょうし、メジャーになるまでのレコード会社の投資というものもあるはずで、育ててもらって有名になったところで恩を仇で返すようなことはすべきでないかもしれません。

ただいずれにしても私的録音録画補償金をiPodやHDDレコーダーにまで掛けようとしている日本とは全く違う世界の話ですね。この補償金もちゃんとアーティストに分配されているのならまだ納得できないこともないのですが…