海賊Jack Sparrowには似ても似つかない

こんなに治安のいい国に住んでいながら「最近物騒になった」などと勘違いしている日本人にとっては全く実感が湧かず、海賊などというのはほとんどファンタジーの世界のものとしか思えませんが、東アフリカのソマリア沖では海賊が横行し、世界の海運に脅威を与えています。早い話が海の強盗団であり、AK-47RPG-7といった火器で武装しているので、武器を持たない民間の船舶では全く歯が立たない相手です。

ソマリアという国は1991年に勃発した内紛により国土が分断され、現在に至るまで国際的に認められた正統な政府が存在しない無政府状態が続いているそうですが、政府が存在しないということは正式な警察組織も存在しないわけで、必然的に著しく治安が悪化してしまっているのではないでしょうか。また、内戦によって国内経済は崩壊してしまっており、海賊行為による収入が主要な外貨獲得源になってしまっているというのも恐ろしいものです。

このソマリアが位置するのはスエズ運河からインド洋への出口にあたるアデン湾に面したところであり、ここを往来する多数の船舶が危険にさらされています。もちろん日本の貿易に関係する船も例外ではなく、実際に昨年も5隻もの船が被害に遭い、人質となって未だに解放されていない乗組員もいるようです。

こうした状況なので、諸外国では海軍が民間船舶の護衛に付いたり、海上警備行動を取るなどし、また交戦も頻発しているそうです。しかしながら、日本の自衛隊は法の未整備ということでなかなか派遣することができず、ようやく昨日、派遣準備命令が出されたところです。これに対して日本の一部マスコミなどは、自衛隊の海外活動がまたなし崩し的に拡がっていく、と批判的な立場を取り、「かなり高い確率で日本の自衛隊が海外で外国人を殺傷する最初のケースになる」などという報道をしています。

しかし、こうして派遣そのものを批判する人というのは一体どうしたらよいと考えているのでしょうか。日本人の生命ないし財産が暴力により脅かされようとしていることが明らかであるのに、それを自衛隊以外のどんな組織が保護できるというのでしょうか。これまでは外国の軍隊が救援に駆けつけてくれるなどしてくれていましたが、いつまでもそんなことに頼ってはいられません。そのうち日本船ばかりが狙い撃ちされ、いいカモになるだけでしょう。

もちろん、しっかりとした法の裏付けがないままの派遣には問題がありますし、海外派遣の既成事実を作ることだけを目的としているような人もいるでしょう。しかし、こうした緊急事態に対して、単に批判を繰り返すばかりで議論を尽くさない野党と一部マスコミには全く共感を持つことなどできません。漢字の読み間違いなどをあげつらっている場合ではありません。この先自衛隊はどういう存在であるべきなのか、しっかりと議論していってもらいたいものです。