Green Zoneあくまでフィクションです。単純に信じてはいけません。

日本では沖縄の米軍基地の処遇をめぐって首相が退陣する事態になってしまっていますが、その米軍は日本に基地を置いて一体何をしているのかというと、世界の警察官として日夜世界の平和を守る活動に励んでいるわけです。といっても、この「平和」というのがあくまでアメリカの視点からのものでしかないので、それを押し付けられて反発する人々との間の摩擦が絶えず、結局自分たちが原因となってしまっている場合も多々あるのではないかというところが困ったものなのですが…

近年は2001年の9.11テロを引き金に始まったアフガニスタン紛争と、それに続くイラク戦争が大きな活動となっていますが、このイラク戦争については当時の大統領George W. Bushが就任当初から目の敵にしていたイラクに攻め込むために大義名分をでっち上げたのではないかというような気がしてなりません。「前」が付くとはいえ一国の大統領に対して無礼な言い草かもしれませんが、同じように感じている人は少なくないのではないでしょうか。

このイラク戦争はイラクには大量破壊兵器があり、イラクがその査察を受け入れない、というのが侵攻の理由になっていたのですが、結局は大量破壊兵器の存在自体が誤情報であったということが後に明らかになりました。独裁的ではあってもそれなりの秩序を保っていたフセイン政権を倒してしまったため、多数の犠牲を払ったにも関わらず結果的にイラク国内に混乱を招くだけになってしまったようです。

と、前置きが長くなりましたが、このイラク戦争が一応の終結を迎えた後、大量破壊兵器の捜索を任務とするMET隊(Mobile Exploitation Team)を指揮する一人の軍人を主人公とする映画「グリーン・ゾーン」を観てきました。

大量破壊兵器、英語ではWeapons of Mass Destruction、略してWMDと呼びますが、この映画の最中には何度となくこの”WMD”という言葉が台詞として主人公らの口から出てきます。でもなんだかちょっと間抜けな感じに聞こえてしまうのは私だけでしょうか。日本語も単純な直訳でしかないのですが、漢字が並んでいるだけで硬い感じに聞こえるのに対し、英語ではやや平易な単語の並びで、しかもその略語かと思うとどうも間が抜けた感じがしてしまいます。

それはさておき、この作品は、そのWMDに関する出元不明な情報に基き捜索を続けるものの、空振りを繰り返すことに疑問を抱いた捜索隊のリーダーRoy Millerが、イラク人Freddyの情報提供をきっかけに独自の調査を開始すると…というような話なのですが、まず疑問を感じるのは規律を重視するはずの軍隊で、作戦を逸脱して独自に活動することが許されるものなのかということです。当然指揮官にはある程度の裁量権などは与えられているでしょうが、それにしても自由すぎるような気がします。

それは別とすると、イラクの混沌とした市街地の緊迫した雰囲気は伝わってきて、特に冒頭は米軍兵士らの不安なども感じられたように思います。また一方、そうしたイラク市民の置かれた状況とは対照的に、厳重に守られた安全地帯である「グリーン・ゾーン」の中ではプールサイドで優雅に過ごすアメリカ人がいて、そのアンバランスさが露骨に皮肉に描かれていました。

結局、WMDなど最初からなかった、というのは現実と同じ結論になるのですが、そのカラクリについてはあくまでフィクションであるということははっきりさせる必要があります。真実がどうであったのかは私などが知る由もないことですが、この作品の通りでは陰謀としてもちょっと小さすぎる話でしょう。仮によく似た話だったのだとしても、単に政権内の一人物が仕組んだことだ、と片付けてしまってはいけないことで、そういう方向に流れていってしまうアメリカの社会について、国民全体としても反省が必要なのではないでしょうか。そういう意味ではやや都合が良すぎるまとめ方に感じられました。まあアメリカの核の傘の下で安穏としている日本人がそういうことを気楽に横から言ってしまうのも図々しいかとは思いますが。