Chevrolet Volt乗ってみるよりそばで見る方が未来的かも

私は今週、業務出張で再びデトロイトに来ているのですが、雪の降る極寒の地だった前回から打って変わって汗ばむほどの陽気となっていて、到着した日曜日などは日本よりもむしろ温かいくらいでした。とはいえ先週はまだ雪が降ったということなので、このまま暖かくなるのかは分からないようですが、そこらじゅうの道端でアライグマが轢死しているのは春の風物詩なのかもしれません。

ところで、アメリカにはもちろん仕事で来ているのですが、それとは別に思いがけない機会があり、昨年末に発売されて以来品薄が続いているらしいシボレー・ボルトに触れることができました。残念ながらこちらの免許は持っていないので公道で試乗することはできませんでしたが、駐車場内で一周だけ運転し、その後食事のための移動時に同乗することができました。

ボルトはPHEV、プラグインハイブリッドと呼ばれるタイプのハイブリッド車で、搭載している機器はよく似ていてもトヨタ・プリウスホンダ・インサイトのようなガソリンエンジンをモーターで補助するようなものとは違い、あくまでモーターのみで走行するのが基本で、バッテリーの容量が不足する部分をガソリンエンジンで補うというものなので、一見微妙な違いのように見えても発想としては結構異なるものです。ボルトがバッテリーで走行可能な距離は40マイル(64km)前後とされているようですが、確かに日常の通勤や買物程度であればアメリカでもこの程度で済んでしまう場合が多いようです。バッテリーは家庭の110Vからだと8時間、200Vの電源からだと4時間程度で充電できるようなので、ガレージに一晩停めておけば翌朝には満充電になっているということのようです。まあこのあたりは三菱 i-MiEVなどのEVと同じですね。

また、ハイブリッド車としての形式はシリーズハイブリッドと呼ばれるもので、エンジンは発電機に直結されているだけで車輪との機械的な結合はありません。このエンジンは発電が必要になったときにだけ一定の回転数で回りますが、バッテリーが空になるまでは発電を始めず、プリウスなどのように常に充電されているように保つようなものではありません。このため、ちょっと遠出をするときや充電を忘れたというとき以外、日常的にはほとんどエンジン音を聞くことはないということになりそうです。プリウスでもちょっとした距離であればモーターのみで走行することが可能ですが、モーターの出力もバッテリーの容量も小さいので普段はあまり使用するものではないでしょう。

メータパネルを派手な液晶画面にしていたり、多少未来的な演出がされてはいますが、乗ってしまうとそれほど特別なものではありません。良く言えば違和感がないということなのですが、車重が重いせいか際立って加速が良いわけでもなく、エンジン音がしないのも日本の高級車でもほとんど聞こえないので同じようなものです。まあモーターだけでガソリンエンジンと同じような走行性能を達成しているというだけでも実は凄いことではあるのですが、やはりもう少し、明らかに「凄い!」というものを期待してしまいます。

しかし、外で見ていたときにはなんだか凄いような気がしました。タイヤの摩擦音だけで、それなりのスピードで車がそばを通り過ぎる様子を見ていて、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」の未来のシーンで走る車を見ているような気になってしまったのです。このまさしく未来的な光景も擬似走行音発生装置が義務付けられてしまうとまた見られなくなってしまうのでしょうが、安全のためには仕方が無いでしょう。ただ、どういう音を出すのかはちゃんと考えてもらいたいものです。

ということで、このボルトがプリウスに比べて特に技術的に優れたところがあるというわけではないような気がするのですが、自宅にガレージがあり充電器を設置できる人にとってはPHEVというのも良いのではないかな、とは思いました。ただ、安い車ではないのでメータパネルのようなオモチャだけでなく、走りの面でも特別なところを感じさせてもらいたいものです。まあ、電気がいつでもいくらでも使えるわけではないことがわかった今、PHEVを含め電気自動車にとっては逆風が吹いていますが、今後は一体どのように進むのかは気になるところです。