Androidのスマートフォンでは比較的自由にアプリをインストールできるのに対し、iPhoneではAppleApp Store以外からはインストール出来ないことになっていて、それをAndroidの利点の一つとしてあげられることがあります。iPhoneに他のアプリをインストールするためにはいわゆる脱獄/jailbreakというソフトウェア的な改造が必要になりますが、それ自体がOSのセキュリティホールを突いて攻撃する行為であり、それを可能とするためにOSをわざわざ脆弱性のあるバージョンに留めておく必要があるなど、セキュリティ的なリスクの大きな行為です。また、脱獄状態でインストールするアプリもAppleによるチェックを受けていないリスクの高いものになります。

しかし、App Storeによる利益をAppleが独占していることに対する批判があります。Appleとしてはアプリの審査や配布と料金収受にかかるコストがあるので、その収益は正当な対価であると主張しているわけですが、料金の30%という上前が大きく感じるのも事実です。これに対してEUは、これが独占されているせいだとして昨年2023年5月2日に施行されたDigital Markets Act (DMA/デジタル市場法)というものの中で規制することになっています。

法制化されてしまってはAppleも逆らうことはできないので、「Apple、EUのDMA対策で欧州でのサイドローディングをOKに(厳格なルールあり)」という記事にあるとおり、iOSの次のマイナーバージョンであるiOS 17.4からApp Store以外からのアプリのインストール(サイドローディング)が可能になるとのことです。

しかし勘違いしてはならないのですが、AppleがApp Store以外からのアプリのインストールを認めていない大義名分は冒頭に述べたようなセキュリティと品質の確保なので、いわゆる野良アプリを認めるということになるわけではありません。Appleが他のストアアプリをアプリとして認めることで、そのアプリを経由して別のアプリをインストールできるようになるということであり、そこでインストールするアプリもAppleによる公証が必要なのは変わりません。したがって、ユーザーが受けるメリットはあまりないのではないかと私は感じています。アプリ開発者が他のストアを選択して販売する場合はAppleの取り分が17%になるということですが、そこにストア側の取り分が乗っかるので差はそれほど大きなものにならないでしょう。

私自身は自分で作ったアプリを自分のデバイスで自由に使いたいという思いがありますが、悪意のあるソフトウェアがばらまかれて無法地帯になってしまうというのは本意でありません。電子メールがスパムまみれになってしまっているような現状を見ると、Appleの審査が必要というのは仕方ないように思いますが、競争がないから安くならないというのも事実ではあるしょうし、でも第二第三のストアができたからといってそんなに変わらないような気もしますし、難しいですね。