世界最大手の半導体製造企業である台湾のTSMC (臺灣積體電路製造股份有限公司)が日本に製造工場を建設しており、ついに来月開所するということですが、その進出先である熊本県菊陽町では空前の好景気に沸いているようです。しかし、ビジネスジャーナルの記事「TSMC工場進出の菊陽町、空前のバブルと地元企業の人材確保難が同時発生」では「バブル」という表現になっていますが、これは適切なものなのでしょうか。
この工場では清掃業務が時給1500円、食堂では3000円というような日本の通常の賃金からは考えられないほどの高水準の待遇となっており、近隣の他の事業者は人材難、人件費高騰といいうあおりを受けているとのことです。局所的・短期的にはそのようなネガティブな影響があることは避けられないとは思いますが、長期的にはTSMCで得た賃金を地元で消費することによって経済が活性化されるというポジティブな影響があることは間違いありません。なにより、その原資となるのは世界中から集められた資金なのですから、日本全体の経済にとっても良いことでしょう。
とはいえ、地元経済がTSMCに依存しきってしまうことになるのも避けられないことでしょう。人件費高騰によりTSMC以外の製造業の国内競争力は維持できず、存続すら危うくなる可能性があります。一方、TSMCの従業員に対してサービスを提供する企業は好況を呈すことになるでしょうが、それもTSMC次第ということになります。
不動産業や建設業の活況は一時的なものに留まる可能性があり、その点では「バブル」という表現が妥当なのかもしれませんが、全体的にはプラス、ただし第二次産業は除く、ということになるような気がします。しかし、このTSMCの待遇も日本で見るから高く感じるだけで、世界的には普通でしかないので、日本全体の賃金水準も引っ張り上げてもらえると嬉しいのですが、なかなかそう簡単には行かないでしょうか。今年の春闘では10000円以上のベースアップを要求していくようですが、どうなることでしょうか。それでもまだまだですけどね。