Safariみなさん期待しすぎ…

WWDCすなわちWorldwide Developers ConferenceといえばAppleが毎年開催している「世界開発者会議」ということで、Apple製品に関連する製品の開発を行っている人々が世界中から集まる一大イベントであるわけですが、基調講演以外はNDA (守秘契約)が必要となる非公開のものとなっています。従って、必然的に参加者以外の注目は例年Steve Jobsが行っているこの基調講演に集中することにもなりますが、WWDCの本来の趣旨から若干外れて新製品の発表に期待する人がほとんどなのではないでしょうか。しかし残念ながら日本時間で昨日行われた今年の基調講演では新しいハードウェアに関する発表はなく、今年バージョンアップして発売予定のMac OS X 10.5 Leopardの話題が中心となりました。まあそれはそれで新しい情報もいくつかあって楽んだ人も多かろうとは思いますが、お決まりの”One more thing…”では何とSafari 3 for Windowsが発表されました。

これについては既にあちこちで話題となっていて、わずか一晩の間に今更感があるというのにも世間(の一部)の関心の高さが伺えるわけですが、SafariというのはMac OS X標準のウェブブラウザで、Macユーザの多くの人がこのブラウザを使用しているのではないかと思います。基調講演ではSafariのシェアが5%に届こうとしていると伝えられ、この数字だけを見るとごくわずかなものにも見えますが、Mac自体のシェアがそもそも5%程度のものでしかありません。実際にはインターネットに接続されていなかったりでウェブにアクセスすることのないWindowsマシンも数多く存在するでしょうから、ほとんど全てのMacユーザがSafariを使っているというわけではないかとは思いますが、いずれにしてもMacユーザの過半数が使用しているのは間違いないでしょう。

とはいえウェブサイトの運営側から見ればあくまで5%にすぎず、このわずかなユーザのために確認したり特別な対応を取ったりすることを省かれてしまうことも多く、未だに多くのウェブサイトが「IEのみ対応」などと謳っていて、良くても「IEとFirefoxに対応」となっていて、たとえ実際には何ら問題が無くとも「Safariにも対応」と明言しているようなところはほとんどありません。Safariを普及させる以外にこの状況を改善する策はないわけですが、自社のMacに限定していてはどうしても限界があり、既にその限界には達してしまっているということでWindows版を公開し、一気にシェアを向上させようと考えたのでしょう。

今回公開されたのはLeopardに同梱されるSafariの新版、バージョン3のPublic Betaであり、Mac用とWindows用が同時に公開され、無償で誰でもダウンロード可能となっています。ただしこれはあくまでベータ版、しかも英語版のみの公開となっているので注意が必要です。私もすぐにダウンロードしてインストールしてしまいましたが、日本語は完全に表示することができませんでした。「一部表示できない」のではなく「全く表示できない」のです。実際にはページのエンコーディングに依るのか表示できるところもあるようですし、設定ファイルをゴニョゴニョとエディタなどでいじれば無理矢理表示することもできるようですが、メニューの表示などもおかしく、ブックマークの操作を行おうとするとすぐに落ちてしまうということなので、そもそも日本語版Windowsでの確認が全く行われていないのではないかと思われます。ベータ版なので問題点をフィードバックして改善に期待すればいいのかとも思いますが、日本人が使おうとした場合にはアルファ版レベルの出来具合に感じてしまうのではないでしょうか。アップル・ジャパンのページすら表示できないというのは考えものです。

とはいえ、ブラウザマニアの私にとっては新しいブラウザの参入そのものが嬉しいニュースです。またAppleが主張するSafariの12の優位点ではその筆頭にIEの2倍という高速性が挙げられている通り、レンダリングのスピードは日本語に対応していないことを除いても評価できるレベルのものではないかと思います。「サイズ変更可能なテキストフィールド」というのは正直どうでもいいような気がしないでもありませんが…まあこれだけいくつものブラウザが既に存在する中でユニークな機能というのも難しいのもわかります。

ちなみにこのSafari 3はWindows 2000でも動作したという情報もありますが、Mac OS X 10.3では使うことができません。なぜかアップルは後方互換性を軽視しているような気がするのですが、使いたければ新しいOSを買えば済むということでもあるので、余計な互換性のためにパフォーマンスやOSの価格が犠牲になるよりはいいのかもしれませんね。Windows 2000でも動いた、ということはWindowsがそれだけ進歩していないということでもあるのかもしれませんし…