The Hammer of God久々に読んだハードSFでしたが…

この夏はハイペースで読書にふけっている私が次に読んだのは、「2001年宇宙の旅」で有名なArthur C. Clarkeの1993年の作品、「神の鉄槌」です。

神の鉄槌
著:アーサー・C. クラーク
早川書房 (1995/12)
ISBN/ASIN:4152079827

地球への衝突コースを取って進んでいる彗星「カーリー」の軌道をそらすために、宇宙船に乗って彗星に近付きマスドライバーを設置するものの…というどこかで聞いたような良くある話なのですが、それもそのはず、映画「ディープ・インパクト」の元ネタになった作品なのでした。本書初版のカバーにも

スティーヴン・スピルバーグ監督により映画化が予定されている。

と書かれているのですが、実際には内容はほとんど無関係なものになってしまい、原作者としてClarkeがクレジットされることもなかったそうです。

私は「2001年宇宙の旅」に始まるシリーズを夢中になって読んだ人なので、本書の文体なども非常に似たような所があり懐かしいような感じもしてしまいました。全体的に淡々として落ち着いた文章で、勢いで盛り上げるようなところが全くないのですが、頭に情景を描きながら読み進めていくと物語の世界に入り込んでいけるような気がします。また、さりげなくユーモアが盛り込まれていたりしますが、

電子時代初期の小説や映画に登場する発狂したコンピュータの話に端を発する古いジョークだ。

というのは紛れもなくHAL 9000のことでしょう。

しかし、読み終えてから振り返ってみると、本書の始めの方で登場した複数の人物がその後の話にどういう関係があったのかよく解らないようなところがあります。ストーリー的にさほど重要ではない登場人物について不必要に詳細な描写が行われているような感じなのです。何だか無理にボリュームを増やそうとしたような気さえしてしまって、逆に物語が薄っぺらなものに感じられてしまうのは私だけでしょうか。あるいは単に「ディープ・インパクト」を観てしまったあとなので新鮮みがないだけなのかもしれませんが、それにしても映画を観たあとで原作を読んだときには感じられるような深みのようなものもありませんでした。

実際には単に私が最近流行の軽く読みやすい作品に慣らされてしまっただけなのかもしれませんが、そうは言っても学術書などではないのですから読んで面白いと思えなければ意味がありませんよね。まあ、基本的にはSF好きなので面白くなかったわけではないのですが、終わってから「アレ?」という感じだったわけです。Clarkeも歳ですからね…何となく古くさい感じも拭えませんでした。「2001年」のシリーズは面白かったので期待していたのですが…そういえば確かに最後の「3001年終局への旅」は微妙だったような気もしてきました…