USS Alabama閉所恐怖症の人には考えられないことでしょうが

日本の自衛隊が保有しない装備に原子力潜水艦というものがあります。私はこれまで原潜といっても単に動力が異なるだけで他の潜水艦とそれほど大きな違いがあるものとは思っていなかったのですが、これは大変な間違いだったと今頃になって認識を改めました。原子力以前の潜水艦は基本的に浮上している間にディーゼルエンジンなどで発電してそれをバッテリーに蓄えておき、潜航中はその電力によって推進その他の動力をまかなうという仕組みになっているため、連続して潜航する時間や距離はバッテリー次第という限界がありました。しかしこれに対し原子力潜水艦では原子炉の稼働に酸素を必要としないため潜水航行中でも常時発電することができ、その電力や熱を利用して真水や酸素を得ることができるので、潜水を継続できる時間は単純に搭載する食糧が尽きるまでとなり、それまでの潜水艦とは全く違う次元のものとなっているのでした。

しかし、機械の方はそれだけ進化しているにも関わらず、乗組員の方は同じ人間のままです。こんなにも長い時間閉鎖された空間の中に閉じこめられていればそれだけで精神的に大きな負担がかかることでしょうが、さらに軍事上の特別な使命が与えられているとなればそれはなおさらのことでしょう。そんな原子力潜水艦内での緊迫した人間ドラマを描いた「クリムゾン・タイド」という映画が1995年に公開されてますが、今回はそのノベライズ版を読んでみました。

クリムゾン・タイド 特別版
監督:トニー・スコット
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント (2006/01/25)
ISBN/ASIN:B0009Q0JYW
著:リチャード ヘンリック
集英社 (1995/08)
ISBN/ASIN:4087732312

私はこの映画の方はまだ観たことがなく、小説版を読んでから映画の方もぜひ観たいと思ってDVDをTSUTAYAで探したのですが見つからず、もう一度探して見つからないようならリクエストでも出さないとダメかと思っています。1995年の公開ということはもう12年も前の映画になりますから、すべてDVDで揃っているというわけでもなければこれも仕方のないことかも知れません。

それはさておき、物語の舞台となっているのはアメリカ海軍太平洋艦隊バンゴール基地所属オハイオ級原子力潜水艦第6番艦アラバマ(SSBN-731)です。24発の核弾頭付きSLBMトライデントを搭載するという恐るべき破壊力を持つこの潜水艦が、ロシアで勃発したクーデターに対処するために派遣されます。出航後しばらくして情勢が緊迫する中で敵艦の攻撃を受けるなどして事態は深刻な局面を迎え…と何を書いてもネタバレになりそうで何も書けません。

まあ、叩き上げの艦長とハーバード卒の華々しい経歴を持つ新任の副長との間の衝突や他の乗組員との人間関係が主題に描かれているのですが、アクション映画でなければ戦争物というのは大抵そういうものでしょうか。この作品が良くできているのはロシアのクーデター勢力の様子が断片的に描かれていて、それがあるところから完全に途絶えて状況がわからなくなり、ちょうどそれがアラバマが外部の情報を得られなくなっていることとリンクしているということで、これによって読者も緊張感を味わうことができるようになっているところです。映画のノベライズということでもともと読みやすく書かれているのでしょうが、私も読み始めるとその緊張感に乗って一気に読んでしまいました。

また、潜水艦の中の様子というのは映画やこうした小説でないとなかなか知ることがありませんが、私たちの日常からかけ離れた環境での任務や他の生活の状況も垣間見ることができたのも面白いところでした。通常の軍艦でもちょっと変わった習慣などがあったりするものですが、何ヶ月も海面下に潜んでいることもあるという原潜では昼夜の区別もなくなるためかなり特殊な状況となるようです。これを機に潜水艦についてちょっと調べてみると、色々と面白いことがわかりました。

ということで、ぜひ映画の方も観てみたいと思うわけですが、何とか手っ取り早い方法はないでしょうか。TSUTAYA DISCASではすぐに借りられそうですが、やはりこういうときは特に便利ですね…便利なのはわかっているのですが、私には使い切ることができそうにないので…