Iorek Byrnison映画には映画の、本には本の良さが。

先日観た映画は今一つだったものの、原作にはちょっと興味を引かれていた「ライラの冒険」シリーズ第1巻「黄金の羅針盤」ですが、図書館で予約していたものを借りることができたので早速読んでみました。先日も引用した通り、Wikipedia

当初は児童小説として出されたものの、ジョン・ミルトンの『失楽園』にも題材をとった、深い宗教的・哲学的内容が高く評価されており、大人の読者にも人気が高い。

という記述はやはり気になっていましたので、かなり期待してしまっていましたが…

黄金の羅針盤—ライラの冒険シリーズ〈1〉
著:フィリップ・プルマン , 他
新潮社 (1999/11)
ISBN/ASIN:4105389017

「大人の読者にも人気が高い。」とは言ってもやはり子供向けの作品ですから、体裁から言っても小学校高学年以上向きのもので、活字が大きめで行間が空いていて、ふりがなも振られています。しかし、そのふりがなも全てについているのではなく、またいかにも子供にわかりやすい言葉が使われているというわけでもないので、大人が読んでもそれほど抵抗はないと思います。さすがに内容的にはソフトなものになっていて、暴力や恐怖感の描写は穏やかですが、ファンタジーの世界にはその方が合っているかもしれません。

ストーリー自体は映画版とそれほど大きくは違いませんが、映像では表現しにくかったり、絵になりにくい、スクリーンに生えない場面は割愛されていたりアレンジされていたりしていましたし、映像や台詞では伝えにくい内容が活字になっていることでしっかり伝わり、「こういうことだったのか」と理解がはっきりしたようなところも多々あります。また大きな違いは、映画では終盤のエピソードの順序が変わっているのと、この原作第1巻の3/4くらいのところで切られているというところですが、この続きは2作目で描かれる予定になっているのでしょう。ただこの映画はどうも成功とは言えなかったようなので、続編ができるのならといったところですが。

それにしてもよくわからないのが主人公のライラが育った「学寮」というもので、どうしてそんな大学の施設で子供が育てられたりするのか、それは一般的なことなのかというところがどうもしっくり来ない原因となっています。まあライラ以外にはそういう子供は登場しないので、特別なことなのだろうとは思います。

また、「ジョン・ミルトンの『失楽園』にも題材をとった、深い宗教的・哲学的内容」というところですが、作品中で思いっきり旧約聖書が引用されているとは、そんな直接的なものとは思いもよりませんでした。この有名なアダムとイブのエピソードを、人が皆ダイモンを持つ世界に当てはめるとこういう解釈になるのか、というのはちょっと面白いところでしたが、期待したのとはまた違うものだったような気がします。

とはいっても、ダイモンの存在がこの作品をファンタジー作品としてユニークなものにしていますし、さすがに大人にはスラスラ読めてしまうのでそこそこ楽しむことができました。物語はまだ途中なので当然ここで終わらせるわけにはいきませんから、早速続きの第2巻、第3巻も予約を入れておきました。