Gaius Julius CaesarGallia est omnis divisa in partes tres.

先日「ローマ人の物語」を読み終えたことで「にわかローマ通」になった私ですが、こうなるともうちょっとローマについて知りたくなってくるもので、次はいったいどの本を読むべきかと考えました。「ローマ人の物語」の中でもいくつかの書物が紹介され、引用されていましたが、やはり最初に読むべきはローマ史上最も有名で、ローマの発展に大きく貢献したカエサルその人が著した「ガリア戦記」ではないかということになったのですが、さすがに2000年も前に書かれた名著であるということでその邦訳も何度も繰り返されており、図書館にもいくつもの版が存在しました。今回はその中で今年になって出版された最新の訳で「最も正確にかつ最も読みやすく新訳」と謳っている平凡社ライブラリーの「ガリア戦記」を読むことにしました。

ガリア戦記 (平凡社ライブラリー)
原著:Gaius Julius Caesar
平凡社 (2009/03)
ISBN/ASIN:4582766641

「ガリア戦記」の原著はカエサル自身がガリアを平定しローマの覇権を確実なものとするまでの過程を口述筆記で著したもので、今から2000年以上も昔に書かれたものでありながら完全に残っており、古代ラテン散文学の最高傑作ともいわれるものです。軍人であり政治家であるカエサルによるものであるために文体が簡潔で洗練されたものであり、人々に感動を与えるようなものではないにしても、当時のガリアの様子とローマ軍の戦いぶりが手に取るように伝わってくる名作であることは私にもわかりました。ただ、プロパガンダ的にローマ軍を美化しているようなところもあるのではないかというのはちょっと気になったところで、あくまでローマ人の目から見たガリアであり、全てが真実だと思ってはいけないのではないかと思います。

この訳本についてはメーリングリストで20人近い人々により訳されたものを元に、訳者が文体・用語の統一などをしてまとめ上げたものだということです。多くの人の目が通っているということなので、その分信頼できるものになっているのではないでしょうか。しかし、ラテン語というのがもう日常的に話す人のいなくなった言語であるので、日本語訳のできる人というのもかなり限られているはずです。私は「ローマ人の物語」を読んでからラテン語が読めたらちょっと面白いかもしれないとは思いましたが、研究者でもない限りそれを役に立てるのは難しそうですからね。その限られた人々の中の20人というのは、もうラテン語の第一人者ばかりなのかもしれません。

それにしても、2000年以上前の書物が今でも普通に出版されていて普通に読むことができるというのは凄いことです。それだけローマのテクノロジーがレベルの高いものだったということでしょう。ヨーロッパでもローマ以後中世までの文献というのはあまり残っていないのではないでしょうか。また日本に至っては弥生時代ですから、こんなに完全な文献が残っているどころか邪馬台国が日本のどこにあったのかさえわかっていないような時代のことです。だからといって現代の日本人が卑下する必要は全くないと思いますが、歴史を振り返ってみたときには到底敵わないというのが事実でしょう。当時のローマ人と今のヨーロッパ人とはそれほど繋がりがあるわけでもないはずですが、有色人種が見下されるわけも何となくわかるような気もします。