ローマ水道橋現代よりもよほど進歩している面も。

行きつけの散髪屋さんとの雑談の中で昨年末に教えてもらって1巻目を読んでからかれこれ半年、私もようやく最後まで読み終えることができました。何と言っても王政ローマの始まりから西ローマ帝国の滅亡とその後のローマの荒廃まで、紀元前8世紀から紀元後8世紀の初めまで、1500年近い期間の歴史を15巻に渡って描いたものであり、発行も1992年から2006年まで1年に1冊のペースで行われたという大作です。

ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉
著:塩野 七生
新潮社 (2006/12)
ISBN/ASIN:4103096241

巻によって若干の差はありますが、それぞれ400ページ前後のボリュームがあるので読む方もそれなりに大変です。初めのうちは週1冊のペースで読んでいて、図書館から2週間ごとに2冊ずつ借りてくるというのがちょうどいいペースだったのですが、途中から徐々にペースが落ちてきて、終盤には1冊読むのに2週間かかってしまうようになってしまいました。

というのも、前半はローマという国もどんどん拡大する一方であり、戦いも連戦連勝というような上昇気流に乗っているような感じなのですが、当然ある時点から滅亡に向かって衰退する一方となっていくので読んでいても苦しいような状態なわけです。特に前半の調子のいいときにすっかりローマびいきになっているので、そのローマのグダグダぶりを見ているのが辛く感じられてしまうのです。

まあ、この半年間にこのシリーズ以外の本も並行して何冊も借りてきて読んでいるので、これに没頭して読むことができればもっと早く読み終えることもできたでしょう。私の場合はあとから読み始めたらしい人の方が私よりもペースが速かったようで、ある時点で追いつかれて借りたい巻が貸し出し中になってしまい、ちょうどその時にHillary Clintonの自伝という重い本を読み始めてしまったので余計に時間がかかった、ということもあります。

それはともかく、半年もかかってしまったので始めの方のことはあまりよく憶えていなかったりもしますが、全体を読み終えて感じたことはカエサルとアウグストゥスは凄かったのだということと、こんなに昔のことがよくもここまでわかっているものだということ、そして電気がなかったということ以外は相当高度に文明が発達していたのにそれでも滅亡し多くが失われてしまったのだという喪失感のようなもの、といったあたりでしょうか。

また、私は昔から理屈無しに暗記するということが大嫌いで、子供の頃には社会科、とくに歴史が苦手で嫌いだったのですが、今こうして接する歴史というのは実に面白く、学校ではどうしてこの楽しさがわかるように教えることができないのか、ということをつくづく思ってしまいます。年号を暗記することには未だに意味を見出せないのですが、今でもそれは変わっていないのでしょうか。

あとはやはりローマの市街や旧ローマ領の各地に行って遺跡を巡ってみたいですね。ローマには12歳の時に行ってはいるのですが、その時にはローマ人についての知識は全くなかったので、その有り難みというのがさっぱりわからず、単なる物見遊山で終わってしまいました。有名な「真実の口」にも触れてきましたが、それはあくまで「ローマの休日」のワンシーンの舞台としてであって、まさかそれが1500年以上昔のマンホールのフタだったとは思ってもみませんでした。今ならそれは全く違っていて、遺跡・遺物を見るにつけそれぞれ物語の場面が蘇ってきて、実に意義深いものになることでしょう。まあそのためには同行者にもぜひこのシリーズは読破しておいて欲しいものですが…