“Live long and prosper.”
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日本で「スタートレック」というと好きな人はいるという程度の人気や知名度だと思いますが、本国アメリカでは「スター・ウォーズ」と並んで日本で言う「サザエさん」や「ドラえもん」と同じくらい人口に膾炙しているテレビ番組となっています。駐在中に私が対応していたアメリカ人のお客さんもトレッキー(大のスタートレックファン)だったのですが、会話の端々にスタートレック関連の小ネタを混ぜてくるので、なかなか日本人には通じないだろうなあと思いながら私はニヤリとしていたものです。なお、Wikipedia日本語版には「トレッキー」について

否定的なニュアンスが強く、揶揄する為に使われているので、ファン自身には嫌われている呼び方

と書かれていますが、現地アメリカでは私の感覚では決してそんなことはなく、かのお客さんも自称していたと思います。

ところで、今回観た「500ページの夢の束」という作品はスタートレックの熱心なファンで自閉症を持つためグループホームで暮らしている主人公のWendyが、パラマウントが主催するスタートレックの脚本コンテストに参加するために大作を書き上げ、提出するまでに巻き起こる出来事を描いたものです。

主人公Wendyを演じているのはDakota Fanningで、私の好きな女優の一人であるElle Fanningの実姉ですが、この二人が素晴らしいのは子役時代からの長く立派なキャリアを持つ、若手女優としてトップレベルの実力者でありながら、マイナーな作品にも数多く出演しているということです。先日観たElle主演の「ティーンスピリット」もそうでしたが、この作品もそうしたものの一つと言えるのではないかと思います。私の地元のシネコンでは特に洋画は大作に偏っているので、本作についても今回Amazon Prime Videoで見つけるまで存在すら知りませんでした。

自閉症という病気について私はほとんど知識がないためあまり語ることができませんが、人口1000人あたり1〜2人の人が持っているとされており、決して珍しい病気ではありません。しかしながら治療法は存在しないということで、社会として受け入れ共存していく必要があるのだと思います。この作品では自閉症を持つ人を主人公としていますが、作っている人、演じている人、そして観る人はおそらくみな健常者でしょうが、この病気に対する理解を広めるために一役買うことができているのでしょうか。

なお、途中でクリンゴン語で会話して緊張をほぐす場面がありますが、会話が交わせるほどクリンゴン語を会得している人がいるというのがちょっと信じがたいような気もしつつ、逆にアメリカなら稀にはいそうな気もしてしまいます。また、テレビや映画で使われるだけの架空の言語なのに会話ができるほど文法や語彙が完成しているというのもすごいことですが、Translator.euなど日本語からクリンゴン語にも翻訳できるウェブサイトも複数存在しています。一時期Google翻訳でも対応していたような気がするのですが、私の記憶違いでしょうか。なお、Translator.euで

日本語からクリンゴン語にも翻訳できるウェブサイトがあります。

を翻訳すると

laH mugh vo’ japanese tlhIngan ‘e’ website qar tu’lu’.

となりますが、存在しない言葉は英語になってしまうようですね。それでクリンゴン人に通じるとは思えませんが。

ということで面白くなかったわけではないものの、このまま映画自体にはまったく触れないまま終わろうと思いますが、原題の”Please stand by.”というのはスタートレックのセリフに度々登場する文句ですが、この言葉を繰り返し唱えることでWendyが落ち着きを取り戻そうとするというのもなかなか良いですね。グループホームで世話をしているScottieとの謎の符丁も良いですが、そもそもScottieといったらMontgomery Scottですよね。ただ、Worfが登場するのはTNGの時代で、James T. KirkSpockと一緒に登場するというのは…というどうでもいいところに引っ掛かってしまいましたが、映画の本筋とは全く関係ないところなので皆さんは気にしないでください。