映画とはまた違う良さがあると思います。
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いいおじさんが青春純愛小説なんて、という声もあるとは思いますが、先日観た映画「世界の中心で、愛をさけぶ」の余韻を失わないうちに、図書館で原作の小説「世界の中心で、愛をさけぶ」を借りてきて読んでみました。実際に私が読んだのはハードカバーの単行本ですが、206ページしかないのでかなりあっさりと読むことができます。

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫
片山 恭一
小学館
売り上げランキング: 152,247

原作とされる本作を読んでみると、主人公朔太郎の高校生時代に恋人の亜紀が白血病に侵されて亡くなる、という大筋の展開は本作から変わらずに映画化されていたのですが、それ以外の部分についてはかなり大掛かりに変更が加えられ、よりドラマティックになって感動的な物語になっていたということが分かりました。最も大きな違いは、映画では重要な役割を果たしていたカセットテープが原作には登場すらしないことでしょう。その他、写真館の重じいではなく朔太郎の祖父だったり、オーストラリアには亜紀の両親と亡くなった直後に行っていたり、と細かいところまでかなりの相違がありました。

となると、映画を思い出しながら間違い探しというか、原作のこれは映画の何に相当するのだろうかというようなことを考えながら読むことになってしまい、感動の物語に没入することができなかったような気がします。最近頓に涙腺が緩んできた私も、本作では目頭が熱くなるようなことがありませんでした。とは言っても、短いながらもいろいろ考えるところはある話であり、良くなかったというわけではありません。

しかし残念ながら、Amazonでの評価はあまり良くない、というか低評価を付けている人が多いようです。低評価のコメントを総合すると「かなり売れているようだから読んでみたけれど字数が少なくて子供向けっぽく、感動するようなものではなかった」「ドラマと比べるとしょぼかった」ということになるかと思いますが、それは文章から情景を想像力で膨らませることのできなかった人、本を読み慣れていない人の言葉なのではないかと思います。本当にそうなのかどうかは分かりませんが、私は短い中にしっかりとした物語があって良かったと思いました。

なお、本作には次のような表現があり、私はめったにしないことですが、思わず書き留めてしまいました。

悲しいからではない。楽しい夢から悲しい現実に戻ってくるときに、跨ぎ越さなくてはならない亀裂があり、涙を流さずに、そこを越えることができない。何度やってもだめなのだ。

どうでしょうか。私はこれだけでも読んだ価値があったと思いました。

ということで、妻にも本作を勧めてみたのですが、妻はドラマ版で満足したからと言って読もうとしません。ドラマでは綾瀬はるかが亜紀を演じているということですが、11回も続いたということはさらに膨らませてあるのでしょうね。私も一度は観てみるべきかもしれないと思い始めていますが、今から観るのに良い方法は何なのか、それを調べるところから始めないといけません。