風神雷神図 (俵屋宗達)好みは人それぞれ?

秋といえば食欲の秋ということで私も毎日いやにお腹が空いて困っていますが、芸術の秋ともいわれる通り秋の涼しく澄んだ空気は何となくクリエイティブな気分にもさせてくれるものです。ちょうど今日は「文化の日」という祝日でもありますが、特にそれとは関係なく一昨日に都電で三ノ輪橋まで行ったあとは、そこから日比谷線に乗って2駅、上野公園へと向かいました。

まずは最近世界遺産への登録を申請したということでも話題になっている国立西洋美術館の建物を改めて見てみようということで行ってみました。この建物は近代建築の三大巨匠の一人、Le Corbusierの設計した作品であり、その他のフランス内外にある作品とともにフランス政府が世界遺産として登録しようとしている価値のあるものです。私は科学博物館へ行くときなどに何度かその前を通ったことはあるものの、今回のようにじっくりと眺めてみたのは初めてでした。確かにLe Corbusierらしい直線基調でバランスの美しい建物ではあるのですが、その横に増築されてしまった部分が魅力をスポイルしているようで何とも残念です。

ということでしばらく眺めては見たものの、私にはさすがに1時間も見ていられるものではなかったので、そのあとは東京国立博物館に行ってみることにしました。こちらでは現在特別展として「大琳派展-継承と変奏-」というのをやっていて、数多くの国宝や重要文化財を目にすることができるということで、時間があればぜひ行きたいと思っていたのでした。

「尾形光琳生誕350周年記念」ということで、光琳を中心にその前後に同じ作風を継承した「琳派」と現在呼ばれる人々の作品を展示したものとなっています。その中には誰かの作品を他の何人かが模写したもの、共通のモチーフを描いたものなどがあり興味深いのですが、代表的なものでは「風神雷神図」が4組同じ部屋に並べて展示してあり、それぞれを見比べてみることができるというのはまたとないチャンスであり、圧巻でした。風神雷神図では古い順に俵屋宗達のものが国宝、尾形光琳のものが重要文化財、酒井抱一鈴木其一のものは指定なしのようですが、宗達の作品は単に古いというだけではなく、空間の使い方、雷神の全体をあえて枠に入れず切っているという構図も見事で、最も絵に力があるように感じ、さすが国の宝というだけのことはあると納得できるものでした。

琳派といわれる人々を代表するのは光琳なのかもしれませんが、私はむしろその先達である宗達と、光琳を研究した抱一の作品が最も好みに合っていました。展示されている中では宗達のちょっと変わった「唐獅子図杉戸」(重文)がとても見事でしばらく見入ってしまいました。また、抱一の「柿図屏風」も素晴らしかったのですが、これはメトロポリタン美術館の所蔵品ということですから、目にすることができてラッキーでした。私が今回最も気に入ったのはこの「柿図屏風」かもしれません。

他にも素晴らしい作品はいくつもあって、とても覚えきれない状態だったので、今回は初めて、思い切って図録を購入してしまいました。3000円という価格は私にとってはちょっと勇気の要る値段ですが、今回の展示はそれに見合うだけのものがあったと思います。絵を眺めて楽しむだけでなく、その背景にあるものなども知ることでより深く味わうことができるでしょうから、むしろ安すぎるくらいかもしれません。これだけまとまったものはなかなかないでしょうし、そもそもこういう機会でもなければ私が手に取ることもないでしょうから…