伊勢エビフライチャンスがあれば行ってみたい!?

世界中をくまなく旅行して回っているという人でも、南極に行ったことがあるという人はなかなかいないのではないでしょうか。オーロラを見に北欧やアラスカの北極圏に行くという人はたまにいますが、観光で南極に行ったことがあるという人にはお目にかかったことがありません。まあ、夏の間はそれなりに気温も上がるので観光ツアーなどもあるようですが、なかなか敷居が高いですね。

ところで、南極に行く人といえば観測隊員を思い浮かべますが、その観測基地では昭和基地が最も有名ですね。50年以上の歴史を持つ昭和基地では40人もの隊員が越冬するということでかなり規模の大きな基地になっているようですが、この昭和基地から1000kmほど離れた内陸の標高3810mの高地にはドームふじ基地という基地があるのだそうです。そんな基地があるということはおろか、南極大陸にそんな高地があるということも知りませんでしたが、この基地のある場所は年間平均気温が-50℃以下、最低気温は-70℃以下にもなるという想像を絶する極寒の地です。

そんな極限状況ではどんな生活が送られているのか、なかなか興味の湧くところではないかと思いますが、このドームふじ基地に調理担当隊員として派遣され越冬した西村淳氏によるエッセイ「面白南極料理人」を原作とした映画「南極料理人」が非常に面白いと聞いてぜひ観たいと思っていたのですが、ミニシアター系での上映となっていて近所では観ることができずDVD化を待っていたところで、今週ようやくレンタルが開始されたので早速借りてきて観てみました。

南極料理人 [DVD]
監督:沖田修一
バンダイビジュアル (2010/02/23)
ISBN/ASIN:B002YV7V7I

各人がそれぞれの担当分野を持つスペシャリストで構成される越冬隊員の中で、主人公の西村は自分を含め8人分の料理を作るために海上保安庁から派遣されています。観測などのために越冬する隊員とは違い、その隊員をサポートするためのスタッフ的立場で参加していることになりますが、毎日インスタント食品ばかり食べているわけにも行きませんし、隊員が十分な成果を上げるためにはその健康を維持することも重要な役割と言えます。

昭和基地からでさえ1000kmも離れているということで外界からはほぼ完全に隔離された状況にあるわけで、調理するといっても普通のレストランでするのとはかなりの違いがあるようです。標高が高いということや、十分な火力が使えないということ、保存できない材料は使えないことなど様々な制約の中で、創意工夫とともにバラエティ豊かな料理を提供するというのは並大抵の能力ではないでしょう。

かもめ食堂」や「めがね」と同じくフードスタイリストの飯島奈美氏が料理を手がけているということで「ごはんにしよう。―映画「南極料理人」のレシピ」というレシピ集も出ているのですが、やはりどの料理も非常に美味しそうで食べたくなってきます。家庭の食卓に並ぶようなブリの照り焼きから高級フランス料理、はたまた伊勢エビをまるごと使ったエビフライまで、こんな料理が食べられるなら南極でもどこでも行けるのではないかというくらいです。

さて肝心の映画の内容の方はといえば、こんな極限状態の中で個性豊かな隊員たちが繰り広げる日々の出来事を面白おかしく描いたような作品になっていて、基本的に笑えます。しかし、遠く離れた故郷に家族や恋人を置いてきた隊員たちの複雑な胸の内や、任期を終えてついに再会した時の喜びも想像させるので、単純におかしいだけでなく、かといって重くなりすぎることもなく絶妙なバランスとなっているのではないでしょうか。私はとても楽しむことができて大満足です。

それにしても-70℃の世界にパンツ1枚とかで出て大丈夫なものなんでしょうか…息を吸い込んだだけでもタダでは済まないような気がしますが…