Ryder in The Taking of Pelham 123ハニーオーツでターキーブレスト、アボカドをトッピングで…

地下鉄での犯罪・事件というと日本人の多くがまず思い浮かべてしまうのは地下鉄サリン事件でしょう。また、韓国で192人もの死者を出した大邱地下鉄放火事件というものがあったのも記憶に新しいところではないでしょうか。このどちらの事件もにわかに信じがたい大変痛ましい事件であり、地下鉄の車内という逃げ場の無いところが現場となったときの恐ろしさを思い知らされる出来事でした。

もしもこの地下鉄という交通機関がハイジャックにあったとしたら、ということを題材とした「サブウェイ123 激突」という映画を観たのですが、ハイジャックの代表的な標的である飛行機とは違い、日常的な足として使われている乗り物だけに自分もいつ巻き込まれるかもしれない、というリアリティが緊迫感を増大させているようです。といっても私は普段徒歩と車ばかりで電車には乗らないのですが。

サブウェイ123 激突 コレクターズ・エディション [DVD]
監督:トニー・スコット
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2010/02/24)
ISBN/ASIN:B002DGTAJ6

舞台となっているのはニューヨークの地下鉄6号線です。原題の”Pelham 123″というのは始発駅のPelham Bay Parkを午後1時23分に出発する列車のことで、この列車が途中で犯人グループに乗っとられます。先頭車を残して切り離され、その先頭車には銃で武装した数人が立てこもり、その時居合わせた乗客13人の身代金として1千万ドルがニューヨーク市に対して要求されます。これに対して列車との無線通話を担当した司令室のWalter Garberと、Ryderと名乗る犯人グループのリーダーとの間で駆け引きが繰り広げられるのです。

この作品はJohn Godeyの「サブウェイ・パニック」という小説が原作となっているのですが、すでに過去2回映画化されているものです。私はどちらも観たことがないのですが、それらと見比べてみるというのも面白いかもしれません。こうして何度も映画化されるということは、素材としてそれだけ優れたものであることの証である反面、映像化が難しくこれまでに完成されたものとはなっていない、ということでもあるのでしょうか。

本作の監督はTony Scottですが、非常に凝った映像効果が使われています。緊迫感の演出には効果的ですが、ちょっとやりすぎ感があって落ち着かないような気もします。これは好き嫌いの分かれるところかと思いますが、以前観た「デジャヴ」との共通点も多いかもしれません。主演が同じDenzel Washingtonだということでなおさらそう感じるのでしょうか。しかし、特にオープニングは地下鉄の様々な効果音を使いつつ非常にかっこいい映像となっていて、無駄な前置きなしにスムーズに事件に入っていくことができるようになっているのはかなり良いのではないかと思いました。

主役のもう一人はRyderを演じているJohn Travoltaです。反対に良い人を演じているときは胡散臭さが漂ってしまい信じきれないところがありますが、悪役の時のこの人の存在感は素晴らしいです。Denzel Washingtonの方はいつかどこかで見たような、いつものヒーローという感じですが、それでも人間的な温かみのあるヒーローを演じさせたら流石と言わざるを得ません。

様々な理由で日本の地下鉄では同じようなことは起こりようもないのではないかと思いますが、反対にニューヨークなどではいつ起こってもおかしくないように思われる事件で、模倣犯が出ないのが不思議なくらいです。現実的に考えると逃走経路の確保が難しいというのがそれを阻んでいる一番の理由でしょうか。まあ、実際にはこういった事件はほとんどが失敗に終わっているわけで、まともな思考が出来る人は実行に移したりしないものなのでしょうが、何を考えているのか理解出来ないような人もたまにいますからね…