アメリカ現地時間の今夜、2024年度のアカデミー賞の授賞式が開催されます。ノミネート作には日本ではまだ公開されていなかったり、そもそも公開の予定がないものもありますが、最近の日本の配給会社なのか映画館側なのかは洋画の扱いがだいぶ渋くなってしまっていて、本当にヒットしそうな対策・話題作以外は上映されないことが多いので困ります。今回の有力ノミネート作の一つ、「オッペンハイマー」も最寄りのシネコンでは上映されないため、隣の市まで観に行かなければなりません。

しかし上映されるだけまだ良い方で、もう一つのノミネート作「アメリカン・フィクション」は劇場では公開されず、Amazon Prime Videoでの独占配信となりました。これは製作したライオンのオープニングロゴで知られるMGMスタジオが現在はAmazon.comの傘下にあるためでもあるので、配給元の戦略的判断ということなのでしょう。内容的に作品を理解するためにはアメリカの社会的背景を知っている必要があるため、日本では劇場公開が難しいと判断されたのもやむを得ません。

とはいえ、プライム会員の私にはAmazon独占というのは特に問題にならないので、私も今日この作品を観てみました。この作品はジャンルとしてはコメディドラマとされています。しかし、話の進み方が極端だったり、観ていてクスリとする場面はいくつかあったりはするものの、基本的にはシリアス基調で進むので「コメディってこういうものだっけ?」と自分を疑ってしまいさえしました。しかしやっぱりコメディだったのです。

描かれているのは主にアメリカの白人社会からの単純化された「黒人社会」への認識と無理解でしょう。このあたりはだいぶ皮肉を込めて描かれ、メッセージとして強調されています。このほかに、家族その他の人間関係のあり方も主題の一つとなっているのではないかと思います。

しかし私の率直な感想としては、これがアカデミー賞にノミネートされるほどのものなのかというのがよくわかりません。この印象は特にラスト数分のせいなのかもしれませんが、Tomatometer 93%、Audience Score 96%ということからすると私の理解力が追いついていないのかもしれません。同じノミネート作で比べると、先日観た「哀れなるものたち」のほうがだいぶ良かったように思いますが、これも単に好みの問題かもしれません。

ちなみにこの作品、R指定なのですが、それほどの暴力描写があるわけでも、たいした性的描写があるわけでもなく、ただ単に作中に出てくる著書のタイトルが原因なのではないでしょうか。したがって、もしも映倫が審査していたらPG12くらいで済むのではないかと思います。いや、一瞬無駄に血が流れるシーンがあったからR15+くらいになるのですかね。