WRCモータースポーツの終わりの始まり?

アメリカのサブプライムローンの破綻に端を発した…なんていう説明はもう聞き飽きましたが、アメリカとヨーロッパを襲う経済危機の影響は円高との相乗効果で日本の輸出企業にも深刻な影響を与えつつあることが明らかになってきています。特に影響が大きいのは対米輸出に大きく依存してきた自動車産業で、トヨタホンダも下半期は営業赤字を見込んでいるということで、先日発表されたホンダのF1からの撤退というのも致し方なしといったところのようです。

業界のトップ企業がそれほど厳しいのであれば、それより下位に位置する企業が苦しくないわけがありません。案の定、というわけではありませんが、一昨日はスズキWRCのワークス活動休止を発表し、それに続いて昨日は富士重工WRCワークス活動の終了を発表するに至りました。スバルの「終了」に対してスズキの「休止」というのは一時的なものであって、環境が整えば復帰もあるという含みを残すものとなってはいますが、いずれにしてもFIA世界ラリー選手権(WRC)の場からは日本メーカーが消えてしまうこととなります。

しかし、こういった流れも仕方のないことなのかもしれません。ガソリンを精一杯燃やしてスピードを競うような競技が、環境意識の高まった現代にはそぐわなくなってきているのは事実でしょうから、広告塔としての価値がなくなってきたのであれば企業が莫大な資金をつぎ込むべきところではないと判断されるのはやむを得ないことでしょう。競技の形として、例えばかなり厳しい燃料制限を掛けて省燃費技術を競うというような、環境志向のものになるなどすれば話は別かもしれませんが、それはそれで観ていて面白いものにならなければ仕方がないのでなかなか難しいものがありそうです。

まあ、つい先日までリッター200円目前まで高騰したガソリン価格も一気に下がって今では100円を切ろうかというところまで来ているので、燃費に対してそれほどシビアに考える必要はなくなってきたのかもしれませんが、この機会が自動車というものを人々が見つめ直すきっかけとなり、以前よりもガソリンの消費が抑えられ、自動車への要求にも若干の変化があったのではないでしょうか。以前はパワーがあり速い車がカッコ良く見えたものですが、今はそういったことには訴求力がなくなってきているように思います。

また、F1やWRCといったモータースポーツの世界から日本企業の撤退が相次いでいるというのは、一時期の日本企業の台頭を疎ましく感じていたであろうヨーロッパのメーカーや関係者にとっても楽観視できるものではないでしょう。自動車市場とモータースポーツとが切り離されて考えられるようになると、モータースポーツに参戦することによる宣伝効果が失われることにもなり、意義が薄れてきてしまいます。プライベートチームだけで細々と続けていくというのが本来の姿なのかもしれないので、それが決して悪いことではないのかもしれませんが、はたして日本以外のメーカーはどういう選択をすることになるのでしょうか。そしてモータースポーツの未来は…?