間取り図1980年、川崎市生まれ。間取り収集家、マッド・マドリスト。

先日読んだ、というか目を通した「間取り相談室」がなかなか面白かったので、その前作にあたる「間取りの手帖」というのも見てみようと図書館に予約を入れていたのですが、早速連絡が入ったので借りてきてみてみました。ただし、もともと「間取りの手帖」は新書で出版されているのですが、それを文庫化した際に加筆・再編集されているということだったので、私が借りたのはそちらの「間取りの手帖remix」の方です。

間取りの手帖remix (ちくま文庫 (さ7-1))
著:佐藤 和歌子
筑摩書房 (2007/03)
ISBN/ASIN:4480422897

「間取り相談室」の方で収録されていた間取り図は60でしたが、こちらの「間取りの手帖remix」には煩悩の数だけ、108つの間取り図が収録されています。ページの真ん中にどーんと間取り図が載っていて、ページの下の方には「うにょうにょ。(7万円)」というように一言コメントと家賃月額が載っているというような感じです。それに加えて、合間に9つのコラムと1つのポエム(?)が挿入されていて、巻末には「談話室」として対談形式のものが添えられています。この談話室の「お客様」というのは、最初のものは「ノブエさんとフジシロくん」ということで誰なのかわからないのですが、その他は岸田繁氏、とうじ魔とうじ氏、石丸元章氏という、これまたよくわからない人選ではあるものの、それぞれに違ったテーマで面白い話をしています。

掲載されている間取り図というのは見るからにおかしな、パッと見からして使いにくそうなものもあるのですが、やはり面白いのは一見そんなヘンテコでもなく、その辺のチラシでよく見るようなものでも、じっくり目を凝らして見てみると確かにおかしい、というような「味」のあるものです。例えば私が気に入ったのは55番「そんなところに窓はいらない。(8.7万円)」というものですが、一見何でもない、よくある2Kの間取りなのですが、そのコメントの意味を考えてみると確かにいらない窓がありました。トイレと一体になったバスルームの、便器の後ろ側に窓があり、その窓の反対側は3.5帖の洋室なのです。一体誰が何を考えてそんなところに窓を作ったのか、何とも不思議で楽しいです。

しかしそれにしても、こういった間取り図は著者がコツコツと集めたもの、ということは実在の間取りであって、日々目にするチラシの中にも似たような面白物件が埋もれている可能性もあるということになりますから、これからはますます不動産チラシから目が離せなくなってしまいます。引っ越すために家を探しているわけでもないのに目を皿のようにして眺め、じっと見入る光景はおかしなものかもしれませんが、確かにこういうものをいくつか見つけてしまったらスクラップしてコレクションしたくなるというのもわかるような気がします。ちょっと私もやってみようかな、という気になってきましたが、大都市の狭小物件でないとそんなに面白いものはないかもしれませんね。