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Beauty and the Beast (2017)

ディズニー映画の正統。

つい先日の「ゴースト・イン・ザ・シェル」の時にも「アニメと実写の境界がどんどん曖昧になっていく」と書きましたが、これは何もSF的な作品に限ったことではありません。今回観た2017年版「美女と野獣」では予告で「あの名作をディズニーがついに完全実写化! 」と謳っていましたが、さすがに歌ったり踊ったりする家具調度類を実写で撮ることなどできないので、もちろんかなりの割合でコンピューター・グラフィクスが活用されているわけですが、ここで言う「実写」の定義はいったい何なのかと問うてみたくなります。ちなみにWikipediaの「実写」の項目には

実写 (じっしゃ)とは、本来は実況や実景を文章や絵で表現、またフィルムなどに写しとること(たもの)であり、記録映画を指す言葉である。アニメーションやCGなどの映像に対して、実際に撮影された映像を指す言葉としても使われており、本記事ではその意味として解説する。 (2017-05-02現在)

と書かれており、どうもこれに当てはまるとは思えませんが、かと言ってアニメーション映画化なのかというとそう言ってしまうのもかなり強引ですが、いずれにしても「完全実写化」は言い過ぎではないでしょうか。

それはさておき、ディズニーが満を持して、Emma Watsonを主役のBelleに据えて送り出してきた大作ですから、駄作であるはずもありません。1億6千万ドルという途方もない製作費がかかっているそうですが、そんなものは余裕でクリアしてしまう10億ドル以上の興行収入をすでに現時点で得てしまっているそうですから恐れ入ります。1991年版のアニメ映画も大ヒットしたので本作も約束されたようなものだったかもしれませんが、主題歌をAriana GrandeとJohn Legendのデュエットでカバーしているなどの話題作りも奏功したかもしれません。

「美女と野獣」という作品はもともと1740年にヴィルヌーブ夫人により書かれたものが最初だそうですが、その後派生したものの一つがディズニー版ということのようで、本作のストーリーは1991年版からはほとんど変わっていないようです。すでに完成されたファンタジーですから、下手に手を入れない方が間違いないでしょう。

それにしてもEmmaはとても綺麗になっていて、品もあるのでディズニープリンセスにぴったりではないでしょうか。ハリー・ポッターシリーズでHermioneを演じていた頃からその秀才キャラクターを演じるにふさわしい聡明さを感じさせていましたが、本作のBelleも本をよく読み自由な考え方を持つところなど共通点があります。観てしまった後ではEmma以外にBelleを演じるにふさわしい女優が他には思い浮かびませんが、他の人だったらまた違った雰囲気の映画になってしまっていたかもしれません。

作品自体も歌とファンタジーの世界を堪能できてとても楽しく観ることができましたが、ちょっとかわいそうなのは野獣役のDan Stevensですね。野獣の姿では微妙な表情の変化でしか顔を見ることができず、人間の姿に戻ると野獣のときとの迫力の違いで「え?」という弱々しさ、準主役で重要な役柄なのにかなり損な役回りなような気がします。Danの経歴からすると本作は大抜擢という感じのように見えますが、本人としてもこれが代表作とは言いにくいのではないでしょうかね。

Zootopia

あんまり難しく考えなくても。

私は今週、4ヶ月ぶりにデトロイトに出張に来ています。主目的は昨日果たして、後はまとめの打ち合わせをするだけなので今は気楽です。ミシガンでは既に夏のピークを過ぎていますが、今年はちょっと暑いらしく気温そのものは34℃くらいまで上がります。しかし湿度は低く、また屋外に長時間いることもないので汗をかくようなことはなく、きれいな青空を楽しむ余裕があります。

今回のフライトは3月末から始まったデルタ航空の関空-成田乗継便を利用して成田経由としてみたのですが、成田での乗り継ぎ時間が40分程度しかないのでかなり慌ただしく、せわしないのが嫌いな人にはおすすめできません。成田まで飛んでいる時間は1時間足らずなのですが、B滑走路に着陸してからターミナルに着くまで延々と30分も地上を走るのもかなり無駄な感じです。名古屋便の方が空いていて良い席が取りやすいということもあるので、今後はもう利用しないかもしれません。

ところで、13時間という長いフライトの数少ない楽しみといえば機内で観られる映画です。デルタもDelta Studioが導入されてから何十種類もの映画から好きなものを選んで観ることができるようになって非常に良くなったのですが、今回の行きのフライトでは友人が絶賛していた「ズートピア」を英語版と日本語吹替版で観てみました。

哺乳類が進化して高度な知能を持ち、現代の人間社会と同様の文明社会を築いている世界を舞台としており、地方部では草食動物たちは肉食動物を恐れながら生活しているのですが、中心都市ズートピアでは肉食動物と草食動物とが共存しています。これは人種差別を類推させるものなのかなと思いますが、肉食・草食というもともと違うものを指す種別と、外観以外は違わない人種とを一緒にするのはどうなのかなという気はします。

なお、日本語では肉食、草食とはっきり二分する表現になっていますが、英語では predator (捕食者)と prey (獲物)という表現になっており、小型肉食獣などは大型のものに捕食される可能性もあり、日本語の分類の方が適切な感じはしました。

今さらなのでストーリーには触れません。しかし少々ネタバレになりますが、傑作だったのはDMVの職員が全てナマケモノというシーンです。本作ではDMVはDepartment of Mammal Vehiclesの略とされているようですが、アメリカでDMVといえばDepartment of Motor Vehicles、本作の日本語訳では「免許センター」と訳されていますが、実際には日本でいえば陸運局に相当するもので、自動車の登録に関する事務を扱っている役所です。そうでないと話の筋が通らないはずで、免許センターでナンバープレートの照会というのは変です。ともかく、何かにつけて時間のかかるDMVを揶揄するものなのですが、実際のDMVの職員はどういう思いで見るのでしょうね。ちなみに私はこのシーンを見ていて「ナマケモノに対するステレオタイプな差別だ!」と思ってしまったのですが、それだけ擬人化された動物たちが自然に見えてしまったということなのでしょうか。

もちろん他にも見どころはたくさんあって、1回のフライト中に2回観ても退屈することはないくらいだったのですが、「アナと雪の女王」のような泣き所は私にはありませんでした。感動するというよりもドラマが面白い、というような感じの作品なのではないかと思います。Judyの明るい性格がそう感じさせるのかもしれません。

ということで、帰りのフライトでは何を観ましょうかね。

Wreck-It Ralph

大人向け?

先日「ベイマックス」を観て3D CGアニメもやっぱりいいねと思って、そういえば何かの特典で「シュガー・ラッシュ」を入手したまま観ていなかったのを思い出しました。「ベイマックス」と同じくJohn Lasseter製作総指揮のWalt Disney Animation Studiosによる作品で、エンドロールではAKB48の曲も使われたようですが、日本国内の評判はどうだったでしょうか。日本語吹き替え版のみで公開と言われると私は観る気を無くしてしまいますが、そういえば「エクリプス トワイライトサーガ」もそれでガッカリだったのを思い出しました。ともかく、私が持っている「シュガー・ラッシュ」は英語版なので吹き替えどころか日本語字幕もありませんので、余計な心配はせずに観てみました。

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物語の舞台はゲームセンターにあるコンピューターゲームの中、登場人物はゲームのキャラクターたちです。ゲームセンターが営業を終えた後はキャラクターたちも人格を持って自由に過ごしています。また、それぞれのゲームは電源コードを通り電源タップのGame Central Stationを介して繋がっていて、キャラクターたちは行き来することができます。そうしたゲームの世界の中で、1980年代に作られたという設定の”Fix-It Felix Jr.”というゲームの悪役であるWreck-It Ralphが、ゲーム内の他のキャラクターたちに認められたい、という思いから大きな騒動を巻き起こすというものです。

要するにトイ・ストーリーのゲーム版のようなものなのですが、楽しいのは実在のゲームのキャラクターたちも登場することです。「ストリートファイター」のザンギエフや「パックマン」のモンスター、グズタなどはセリフ付きで登場しますし、その他数多くのキャラクターたちがカメオ出演を果たしています。さすがに各種しがらみがあるのかストーリーの進行上意味を持つ主要な3つのゲームは架空のものですが、”Fix-It Felix Jr.”の他、”Sugar Rush”、”Hero’s Duty”のそれぞれ実際にあっても良さそうなものになっており、ストーリーで直接触れられない部分まで含めてしっかりとした設定が考えられているのだと思われます。

他にも様々な分かる人には分かるネタが仕込まれていて、子供だけでなく大人が観ても楽しめるものになっているのでは、というよりむしろこれは大人向けなのではないかとも思ってしまいました。ストーリー上で大きな役割を果たすメントスガイザーなんていうのも最近の子供達はみんな知っているものなのでしょうか。知らなければ説明してもらわないとなんのことやらですよね。

「ゲームの中の世界の物語」と「ディズニー」、「コンピューターグラフィックス」というキーワードからは「トロン」が思い浮かびます。方向性は全く異なる二作ですが、ちょうど30年という時間によってCG技術がこうも進歩するものとはトロンの時にどれほどの人が予想したでしょうか。トロンの30年前というと1952年、映画もカラーとモノクロが混在している時代だったようですが、もちろんCGなんて影も形もなかったでしょう。そう考えると今から30年後の2044年にはいったいどんな技術が映画に応用されているのか、そもそも映画はどういう形で存在しているのかも全く想像できません。楽しみなことではありますが、30年後となると私も元気でいられるかどうかあやしいものです。