曜変天目茶碗そもそもこんなところに美術館があったとは知りませんでした

既に一週間以上前の話となってしまいましたが、国宝・重文をめぐる旅の3日目はいよいよ本命の静嘉堂文庫美術館へ行きました。東京都世田谷区、二子玉川駅からバスで10分ほどのところにある美術館なのですが、私は元々この近辺で育っているというのについ最近までその存在を知りませんでした。まあ子供だったので無理もありませんが…街中に突然ちょっとした林が現れ、その中に静かに建っているという何とも贅沢なところです。

この美術館は三菱の創設者、岩崎弥太郎の弟でその跡を継いだ弥之助が創設した私設文庫「静嘉堂」を起源としているということですが、その後の曲折を経て現在は三菱グループ経営の私立美術館となっています(cf. Wikipedia)。そのコレクションは国宝が7点、重要文化財が82点も含まれているという相当に価値の高いものとなっているのですが、今回のお目当てもこの国宝のうちの一つ「曜変天目茶碗」で、現在「茶碗の美 -国宝・曜変天目と名物茶碗-」と題した展覧会でこの茶碗を目にすることができるということではるばる駆けつけたというわけです。

曜変天目茶碗というのは見る角度により様々に色を変える独特の斑点が美しい茶碗で、世界中に3点しかないと言われており、その3点がいずれも日本の国宝として国内に存在するというものですが、そのうちの1点は先日大阪の藤田美術館に行った際に目にしてきました。しかしこの3点のうちで静嘉堂文庫にあるものが最も華やかで斑点の数も多く見事なものであるということだったので、ぜひとも見ておかなければということだったわけです。

ちなみにもう1点の曜変天目茶碗は京都の龍光院というところにあるということなのですが、残念ながらこちらは非公開の方針を貫いているということらしく、全く見る機会は得られないようです。国の宝であるはずのものをこうして抱え込まれてしまうというのはどうにかならないものかと思いますが…誰の目にも触れないように持っているということに一体どういう意味があるのでしょうか。まだ高い金を取ってでも見せてくれた方がありがたいのにと思います。

それはさておき、実際に目にした曜変天目は確かに藤田美術館のものより華やかさがあり、素晴らしいものであるのは間違いありません。しかし、藤田美術館のものにあった重厚さ、威圧的でさえあった存在感というものがやや弱いように感じられました。まあ、1年近く前に見たものなので記憶自体は曖昧で比較できるものではありませんが、そのような印象を受けました。何となく藤田美術館のものは黒の部分に力があったように思うのです。とはいえ、間違いなく国宝として人の目を釘付けにするだけの素晴らしいものでした。

ところで、展示されているのはもちろん曜変天目だけではありません。唐物、高麗、樂など時代の流れに沿って分類されて展示されていて、なかなか勉強にもなったのですが、様々なものをまんべんなく展示しているように見え、一美術館がこれだけのものをコレクションとして収めているというのも大したものです。大手の美術館に比べればこぢんまりとした展示ではありましたが、この中にも目を引くものがいくつもあり、遠くから出かけていった甲斐があったと言えます。

なかなか見応えがあったのでここでは図録を買って帰ろうかと思い、パラパラとめくってみたのですが、どうも見覚えのない茶碗の写真が載っています。その番号を確認し展示の方を見てみると確かにその茶碗はあるのですが、写真で見るのとはずいぶん印象が違うものでした。写真では光の加減が違っていたり、大きさがつかめないのでこういうことがあるのでした。写真ではいいと思っても現物はそれほどのものでもなかったり、逆に展示を見てとても気に入ったものでも写真写りが今一つで魅力が伝わらなかったりと難しいものです。まあこれは人の写真でも同じことで、誰でも経験があると思われることなんですけどね…